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記事一覧
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なにしろ宵の口で
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「なにしろ宵の口で、人通りの多い往来ですから、詳しい話は出来ません。わたくしは飽くまでも忌だと云って、振り切って逃げて来ました」
「伝蔵は追っかけて来なかったか」
「今も申す通り、往来の絶え間がないので、それっきり付いても来ませんでした」
「そのことを主人に話したか」
「きまりが悪いので黙っていました」
感違いをしている伝蔵は、一途《いちず》に才兵衛を恋のかたきと睨んで、その出入りを付け狙っていたらしい。彼は才兵衛が今戸の寮から帰る途中を待ち受けて、無理に聖天下のさびしい場所へ連れ込んで、かれこれ押し問答の末に、その兇暴性を発揮したものと認められた。福田の屋敷に関係のある者のうちに、お熊が現在の奉公先を知っているものは無い筈であるから、伝蔵は誰の口から聞き出したのでもなく、偶然の通りすがりにお熊のすがたを発見したらしかった。
「わたくしから、こんな事が出来《しゅったい》しまして、御主人さまに申し訳がございません」と、お熊は泣いていた。
http://tonikaku.point-b.jp/b/index.php?year=2013&mon=03&day=18&cd=1
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